リン化インジウム(InP)は、光検出器や太陽電池などの高性能の装置の製造などに使用される二化合物半導体です。
国際研究グループによる最近の研究では、フランス・リールのInstitut Supérieur de l’Électronique et du Numérique (ISEN)の研究者たちが硫黄処理したInP(001)表面上でのPbSナノプレートレットの新たな形成法を検討しました。 走査型トンネル顕微鏡(STM)から派生した走査型トンネル分光法(STS)や光電子分光法を使用して結果の解析が行われました。 ISENのBruno Grandidier氏がさらに詳しくご説明します。
Photo © Joaquim DASSONVILLE
InP上のPbSナノプレートレットの形成
「これらのナノプレートレットは通常はInP基板を鉛とセレンの前駆体を含む溶液に浸漬して得られます。」とISENのBruno Grandidier氏は説明します。 「これは実装が容易な低コストの方法ですが、ナノ結晶と半導体基板の間に界面欠陥が生じるという欠点があります。 この欠陥により光検出器などのヘテロ構造から形成される光電子部品の性能が著しく低下します。」
新たな製造法
「私たちの研究では、ナノ結晶が形成される前に表面を化学的に安定させることにより劣化しない表面を生成することが可能であることを示すことができました。 この結果は走査型トンネル分光法による測定で直接確認することができます。 界面の化学的・構造的分析では、これらの界面の品質が分子線エピタキシー法(MBE)により超高真空で形成されるヘテロ構造に匹敵することが分かりました。」
上図 走査型トンネル分光法により、InP表面の化学的安定化の有無により化学的組成と構造に相違が見られることが示された(Mountains®ソフトウェアで処理したAFM画像)。
光電子分光法の測定を解析する
「いくつかの補足的な方法を使用して、この研究のInP基板の特徴を特定しました。
特に光電子分光法を使用して界面の品質を強調しました。 生成されたスペクトルを分析し、S 2pコアレベルに2つのコンポーネントが存在することによる表面の安定化を確認しました。ここでは最も強いコンポーネントはIn-S結合によるもので、最も小さいコンポーネントはナノプレートレットのPb-S結合に関連します。」
上図 安定化したInP基板に形成されるPbSナノプレートレットで測定したXPSスペクトル。 S 2pコアレベルに2つのコンポーネントが存在するために表面の安定化が促進された。ここでは最も強いコンポーネント(S2)はIn-S結合によるもので、最も小さいコンポーネント(S1)はナノプレートレットのPb-S結合に関連する。
上の例では、次のMountainsSPIP®ソフトウェアのツールを使用して分析を実施しました:
さらに読む
化学的エピタキシーによるInP(001)上のPbSナノプレートレットのトラップフリーヘテロ構造。 L. Biadala, W.Peng, Y. Lambert, J. H.Kim, D. Canneson, A. Houppe, M. Berthe, D. Troadec, D. Deresmes, G. Patriarche, T. Xu, X. Pi, X. Wallart, C. Delerue , M. Bayer, J. Xu and B. Grandidier. ACS Nano, 2019, 13 (2), pp 1961–1967. DOI: 10.1021/acsnano.8b08413#
連絡先
Bruno Grandidier – bruno.grandidier@isen.iemn.univ-lille1.fr